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第3回 モデル業界のプロフェッショナルズ | ロッテンマイヤー (ファッションモデル事務所)
ファッションモデル事務所ロッテンマイヤー代表 佐藤薫 「本人の希望を叶えることがマネージメント」

「学級新聞のような雰囲気で、営業色は全くなしでやっています。」

そう言いながら、佐藤薫社長は事務所が毎月発行している「ロッテンマイヤー新聞」を見せてくれた。モデルが記事を書いて自己紹介をしたり、佐藤さん自身やマネージャーである山中とも恵さんがトピックになったり、「人」に焦点が当てられていることがこの新聞の特徴だ。

「事務所を立ち上げた時、どうやったら多くの人に活動を知ってもらえるかを考えていたところ、『昔の船場商人は毎月1日にお赤飯を炊いてたんだよ』と、近所のお米屋さんから教わりました。そこで、私もお世話になっている人たちにお赤飯を配り始めたんです(笑)。同時に何か情報もつけられないかなと思い、ロッテンマイヤー新聞を考えついたんです。」

紙一枚で文字数も少なく、簡単に読めてしまうところがいい。そして、その新聞を読むとロッテンマイヤーのファンになってしまうような温かさがある。


佐藤薫社長(左)

さっそく、ロッテンマイヤー所属モデルの特徴、そして所属を決める時にポイントとなる要素を佐藤さんに聞いてみた。

「モデルとしての資質は当然なんですが、さらにうちで大切にしていることは『清潔感』ですね。どれだけかわいくても清潔感や透明感を持ってる子は意外に少ないんですよ。他の事務所から来てくれたりするモデルもいますが、ロッテンマイヤーの色になってもらうために、最初から教育しています。」

モデルの教育は基本的にマネージャーの山中さんに任されている。彼女自身もモデルを13年間やっていたそうだ。

「自分が以前モデルだった時に、事務所がこうしてくれたら良かったのにと思ったことを、ここで実践させてもらってます。」

カラーアナリストという肩書きを持つ山中さんは、それぞれのモデルにどの色が似合うかを診断し、メイク、ヘア、アクセサリーなど、モデルの良さを出すアドバイスしているのだ。

「現役の頃、自分の写真を見て『ああ、もう引退しなくちゃ』と思ったことがありました。ところがある時、カラー診断をしてもらって、言われたとおりの色で写真を撮り直したら、表情の写りがすごく良くなって、それからモデルを6年続けることができたんです。」

さらに聞くと、ロッテンマイヤーのモデルたちは全員カラーパレットを持ち歩いていて、服の買い物をするときなどに、必ずカラーチェックをしているという。


山中とも恵マネージャー

「ロッテンマイヤーでは、例えばダイエットが必要な新人が入ってきた場合、『ダイエットしてね』と言うだけでなく、文化人である医学研究者の折田久美先生のアドバイスをもとに計画的なダイエットを指導したり、肌の色とファンデーションの色が合っていないモデルにはカラー診断で合う色を見つけたり、細かくプロデュースしています。」

そして、ロッテン日記。これは新人モデルが事務所に所属した最初の一週間、どのような生活をして、どのような食事をしたかを書いて、毎日提出するレポートのようなものだ。

「面接の時では、モデルも緊張してなかなか自分のことを話せないだろうと思います。だから、その子についてもっと詳しく知るために役立つのがロッテン日記です。まず、この日記を一週間毎日欠かさずつけるという約束を守ることも大切ですし、何を食べたかを毎回記録して折田先生に食事指導をして貰うんです。」

その日記を見せてもらうと、そこにはモデルが写メールで送ってきた食事の写真が貼ってあり、カロリー計算がされ、折田先生のコメントが書かれてあって、まるでスポーツチームのような一面がうかがえた。

話を聞いていくうちに、佐藤さんと山中さんの役割分担が、とてもはっきりしていることに驚いた。社長は経営と営業、そしてマネージャーはモデルたちの教育とイメージコンサルタントを担っている。

「写真を見る目やポージングに関しては山中のほうが優れているので、一切口出しはしません。人は、任されたほうがより良い仕事ができると思っています。彼女にはモデルの経験もありますし、そこは完全に信頼しています。」

そう言う佐藤さんの経歴を聞いてみると、彼女は短大卒業後、アパレル会社での企画やネイリストの仕事を経験し、某タレント事務所にマネージャーとしてアルバイトから働き始めたそうだ。

「私の家系的に『仕事が楽しくなければ死んでいるのと一緒だ』という考えがありました。だから、当時マネージャーの仕事がアルバイトからだと言われても、躊躇することなく働くことができたと思います。」

しかし、すぐに転機が訪れた。

「その事務所に入社して半年ぐらいで、たまたま有名女優のマネージャーに抜擢されて、東京に転勤しました。そこでは、本当にいい仕事を見させてもらったし、いい経験もさせてもらったと思っています。でも、有名女優のマネージャーというだけで、27歳の私が周りから急にチヤホヤされるようになったんです。それは私にとって違和感がありました。その女優が売れているのは、私の功績でもなんでもないわけですから・・・。その頃から次第に、自分の力でタレントやモデルを売り出したいと思うようになりました。」

モデル事務所を始めたいと周りに話したら、出資すると言う人たちが何人も集まったらしい。

「でも、貧乏してでも自分でやろうと決めていました(笑)。」


玉置唯(モデル)

今回は所属モデルの玉置唯さんと伊東由起さんが同席してくださったのだが、(この取材の後)すぐにオーディションがあるらしく、スマートフォンでオーディション会場を調べたりしていて、忙しそうだった。

玉置さんはロッテンマイヤーの創立時から所属していて、その前からすでにモデルとして活動していたと言うから、キャリアはすでに7年になる。そして、もう一人の伊東さんはもともとOLをやっていて、スタイリストの紹介でロッテンマイヤーに所属したそうだ。

そんな二人に、モデルの仕事の魅力を聞いてみた。

玉置唯さん
「ファッションが大好きなので、その世界に常に関わっていられることが一番の魅力です。仕事でいろんな服を着て、自分を表現したり、自分をカスタマイズできることが楽しいですね。意外な服が似合ったりすることがあるので、勉強にもなります。」

伊東由起さん
「OLの時には、はっきり言って仕事に対する責任感がほとんどありませんでした。でも、モデルの仕事では個性を出せるし、自分というものを人生に残していけるので、とてもやりがいを感じます。私にしかできないと思える仕事をやらせてもらっている感じですね。」


伊東由起(モデル)

逆にモデルとして苦労していることは何だろう?これは二人とも答えが一致していた。

「仕事があってもなくても、私生活で気をつけなくてはならないことが多いですね。肌、髪、ダイエットとか。自分の調子が悪くなったらクライアントさんにも迷惑がかかっちゃうし。24時間緊張感を持っている感じがありますね(笑)。」

モデルたちの会話の中で佐藤さんの話題になり、

「よく、クライアントさんから『ロッテンマイヤーには佐藤って名前の人が三人ぐらいいるよなー』って冗談を言われるんです(笑)。それぐらい佐藤社長が行動的で、いろんな場所に足を運んでいるんでしょうね。」

と伊東さんが話すと、部屋全体が笑いに包まれた。そして最後に、

「佐藤社長が私たちの可能性を広げてくれるので、出会えて本当に良かったと思っています。」

と二人のモデルが打ち明けると、佐藤さんは「嬉しい」と言って、顔をほころばせた。

ロッテンマイヤーには「文化人」というカテゴリーが存在する。

「モデルたちには今後のことも考えて、何か一芸を身に着けてほしいと思っています。その時に『元モデル』という肩書きがメリットになることがあるんです。」

そう話しながら、フリーペーパーの記事を見せてくれたのだが、そのページではこの「文化人」に属する元モデルの料理研究家真野稔子先生の写真が一番大きく掲載されていた。雑誌を編集する側の、"容姿のいい人の写真を大きく使いたい"という気持ちが丸見えで笑ってしまったのだが、これが本音だと思う。

「正直、モデルの仕事を一生続けることは難しいです。でも、せっかく一緒に働く縁があったわけですから、モデルたちと長く付き合っていくためにも『文化人』という別のカテゴリーもやっているわけです。」

Afterthought

モデルによって向き不向きの仕事があるはずだと思っていた僕は、それをどのように判断するのか佐藤さんと山中さんに聞いてみた。すると、二人はこう言い切った。

「基本的に事務所側からモデルたちに『それは無理だよ』とは言いません。それを決めるのは私たちではなくクライアントさんであり、モデル自身の力です。本人の希望を叶えることがマネージメントだと思っています。」

END

【協力】 ロッテンマイヤー(大阪)
http://www.rottenmeier.co.jp/
【場所】 ロッテンマイヤー事務所内
【取材・編集】 一賢本沢 / TOPMODEL.JP
※ この記事は2011年12月の取材に基づいて書かれたものです。
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